技術

農業従事者の高齢化及び従事者人数の減少の社会課題の解決を目指して、地に足を付けない農業を目指した農業用ロボットを提案し、特許登録(特許第6931756号、特許第6985770号)されました。
農業用無人ロボットは下町ロケット(ヤタガラス編)の様にGPSを用いた無人トラクターをイメージしますが、農地に足(タイヤ)を接触することなく駆動します。地に足を付けないというとドローンを連想しますが、ドローンは飛行時間に制約が有りますし、散布する農薬が風の影響を受け周囲にも飛び散るとか、きめ細やかな農作業が出来ません。
構成は農地に立てた支柱上にパイプ状のレールを敷設し、このレールに沿ってロボットが移動し農作物を上方から操作(農作業)します(農作物の生育上、上方の空間が広い)。作業ツールを換えることで様々な農作業(植え付け、施肥、散水、剪定、消毒、収穫)に対応できます。また、農地上をタイヤが走りませんので、農作物の育成に必要な最小の間隔(根が張る直径?)で植栽できます。究極は最稠密配置(着想から出願迄の期間が長く、この間に先願(特許第6243497号)が出ていた)となり、収穫量が15%アップします。通常は株間=1.5×条間となっていますが(人が入る or タイヤを通す為?)、株間=条間となると(農地に足を踏み入れることは出来なくなるが)収量が1.5倍になりこれを目指します。
上方から農作業をしますので、レールの下にも農作物の育成が可能です(従来、農地にレールを敷設すると、レール部分には農作物の植栽が出来ません)。また足を踏み入れませんので農地面は水平を保つ必要が無く、作業ツールの長さを斜面に合わせることで、斜面に沿って直接植栽が出来ます。農業用ロボットの動力源としては、今後不要になる住宅用太陽光パネルの再利用も考えられます。複数の農業従事者の畑を(道路を跨いで)レールで繋げば、次の畑へ自動的に移動して行くので、共同所有で十分ですね。

現行の農業は農地に足(人の足orタイヤ)を踏み入れて農作物を目視し農作業を行う、地に足を付けて農作物を育成します。本提案は、農地に接触するのは支柱だけで足を踏み入れません。
農業ロボットの移動を支えるレール(パイプ)は散水や温風の運搬手段としても活用できます(スプリンクラーの配管の様に地中に敷設する必要が有りません)。レール上を移動するので、接触面積が少ないため摩擦が少なく、またタイヤからの菌の侵入が予防できます。また、何列目のレールで、レール端からタイヤが何回転目で、作業ツールの位置が農業ロボット端から何cmという様に、広い農場でもピンポイントで農作物の位置が特定でき、カメラでモニターしながら個々の棒作物に対し、AIが判断しながら農作業(例えばピンポイント消毒)をして行きますので、収穫時にソーティングすることで、同じ畑内でも農薬・無農薬の区別が出来ます(ドローンでは無理)。
日本では、農業従事者の高年齢化により後継者問題が深刻になり、耕作放棄地の拡大と農業自給率の低下が問題となっています。本提案の農業用ロボットでは作業ツールに敷設したカメラで農作物を画像判定し、作業ツールで個々の農作物に農作業(剪定、ピンポイント消毒、散水、収穫)を行っていきますので、最初のAIのティーチングが非常に重要となります。この方法として、カメラ画像で撮影した各農作物の画像をベテラン農夫(畑に入る体力が無くても)が見て、今までの経験を活かし、遠隔で操作することでティーチングを行い、AI農業ロボットにバージョンアップ出来れば、5年で23%の割合で減少している農業従事者の高齢化対策になるのでは?と期待しています。農業従事者の高齢化と共に、後継者問題が注目されていますが、農業後継者はAIが担うかもしれませんネ。
日本は食料自給率がカロリーベースで37%(R2年度)に留まっており、農水省はR12年度に45%に高める目標を掲げていますが、本提案の農業用ロボットが少しでも貢献できればと思っています。
最近、大豆を用いた代替肉の話題を目にすることが多くなりましたが、大豆の生育に適したAI農業ロボットで農畜産業の課題解決に繋がるかもしれません。
また支柱、レールをビニールシートや防虫ネットを保持する構造体としても活用できます。

農業ロボットの移動を支える支柱とレール(パイプ)は散水や温風の運搬手段としても活用できますが、支柱とレールの他の活用としては、農作物の育成に適した環境を構築するための農業に必要な構造物を保持する手段にもなります。農地に人が入れません(足の踏み場が無い)ので、この構造物の敷設は農業用ロボットが行います(特許第6985770号)。
農業に必要な構造物とは、温湿度、雨水量を管理するためのビニールシートや、防虫、防鳥、防獣用のネットや、風水害を防止するための防水シート、防風壁や、必要な波長を取り込むための光学フィルムが該当します。地球温暖化の進行と共に異常気象が頻発し、農作物の生育不良が懸念されます。シートで密閉空間(簡易的な温室)を作り、レールから出てくる温調用の空気や散水で、農作物の育成環境の維持が図れます。また台風被害や豪雨被害の防止も図れます。光学フィルムとして日照管理とソーラーパネル(フィルム状パネル)による発電の掛け持ちが出来たら、農地が再生エネルギー供給場所としても活用できる。‥と夢が膨らみます。
また人が入らないので棚田(段々畑)にする必要が無く、斜面に沿って直接植栽が出来ますので、斜面農地がそのままソーラーパネルの敷設場所(20~30度が最適だそうです)となります。